私は現在、トビタテ!留学JAPANのプログラムの一環として、現在海外に滞在しています。
ディスレクシア(読み書き障害)の子どもたちや、その支援に携わる先生方と交流する機会をいただきました。そこで、自分が開発している読書支援アプリ「RC Line」を実際に触ってもらい、感想やフィードバックをいただきました。
私はこれまで、自分自身の経験や調査をもとにアプリを開発してきました。また、AppleのHuman Interface Guidelines(HIG)を参考にしながら、「シンプルで直感的なUI」を目指して設計していました。
しかし、実際にユーザーに使ってもらうと、想像していたことと現実は大きく異なっていました。
「直感的」は誰にとっての直感的なのか
今回最も印象に残ったのは、自分が直感的だと思っていたUIが、必ずしも子どもたちにとって直感的ではなかったことです。
iOSが標準で用意しているUIの要素の構造は、私にとっては当たり前のものでした。
しかし実際には、説明なしで理解することは難しく、一度説明して初めて使えるようになる場面がありました。
振り返ってみると、私が「直感的」だと思っていたものの多くは、長年iPhoneやiPadを使ってきた経験によって身についたものでした。
Appleのガイドラインに従うことは大切ですが、それだけで対象ユーザーにとって使いやすいとは限らないということを実感しました。
子どもたちは思ったより早く学んだ
一方で驚いたのは、説明した後の習得の速さです。
最初は操作に迷っていた子どもたちも、一度理解すると自分で設定を変更したり、新しい機能を試したりしていました。
私は事前に「難しすぎるかもしれない」と考えていましたが、実際には理解した後の適応は非常に速く、自分に合う設定を探そうとする姿が印象的でした。
読みやすさに正解はなかった
私は日本出発前、「ある程度共通した読みやすい設定の傾向が見られるのではないか」と考えていました。
しかし実際には、好みは本当に人それぞれでした。
ある子は背景をグレーにし、ある子は薄い水色を好みました。ハイライトの色を黄色変える子もいれば、フォントを明朝体に変更する子もいました。
中には、私自身が「本当にこれで読みやすいのだろうか」と思うような組み合わせを選ぶ子もいました。
今回の体験を通して、「ディスレクシア向けの正解設定」を作るのではなく、一人ひとりが自分に合った環境を作れることの方が重要なのだと感じました。
子どもより先生の方が特性を理解していた
もう一つ印象的だったのは、子どもたち自身よりも先生方の方が、その子の特性をよく理解していたことです。
私が子どもたちにアプリを説明することに戸惑っている中、先生方はそのアプリの目的を理解してくれて、子どもたちにそれぞれの設定を提案していました。
今回の経験から、支援技術を作るときは本人だけを対象にするのではなく、先生や保護者など支援する側の視点を考えることも重要だと感じました。
使われないと思っていた機能が人気だった
開発者として特に面白かったのは、自分があまり期待していなかった機能が予想以上に好評だったことです。
RC Lineには、瞬きを使ってページを操作する実験的な機能があります。
正直なところ、私は「面白い機能ではあるけれど、実際にはあまり使われないだろう」と考えていました。
しかし実際には、多くの子どもたちが興味を持ち、自分から試し始めました。
さらに、操作に慣れてくると、「上にも戻れないの?」「もっとこういう操作はできないの?」という新しい要望まで出てきました。
開発者が価値があると思う機能と、ユーザーが価値を感じる機能は必ずしも一致しない。
これが、今回強く感じたことの一つです。
実際のユーザーから学ぶことの大切さ
今回一番学べたことは、自分が正しいと思っていた前提を見直せたことでした。
私はディスレクシア当事者でもあり、インターネットやAIを使った調査で、読みにくさについてある程度理解しているつもりでした。
しかし実際には、同じディスレクシアでも困り方や読みやすさは大きく異なっていました。
また、自分が直感的だと思っていたUIも、対象ユーザーにとってはそうではありませんでした。
本当に使いやすいものを作るためには、実際のユーザーに触ってもらい、観察し、学び続けることが必要だと改めて感じました。